SCIENCE BEHIND THE SKILLs

ARTICLE6

ARを使った技能学習って効果ある?






研究の次のステップとして、私たちはARを活用した技能伝承ツールの開発を目指しています。しかし――本当にARは、技能の学びに役立つのでしょうか? この問いに答えるために、重機オペレーター目線の掘削作業動画に対して、作業時のオペレーターの視線情報を付加した映像と、通常の掘削作業動画のみを視聴する2群(テスト群とコントロール群)に学生を分け、Webアンケート調査を実施しました。左の写真はテスト群に提示した動画のワンシーン、右の写真はコントロール群に提示したワンシーンです



アンケートは、「はい・いいえ・わからない」で答える9問の選択式と、作業のコツに関する自由記述1問で構成しました。参加者は、土木に関する事前知識を持たない学生85名です。 それでは、気になる結果を見てみましょう!

選択式質問の結果


総じて両グループの正答率および得点分布は類似した傾向を示しました。すなわち、得点に関する数値という観点からはあまり差が出なかったことになります。


ではARによる学習って、効果がないの?


いや、そういうわけではありません。個別の質問を見ていくと、有効な差が出ている質問とそうではない質問があることが分かりました。 またテキストマイニングにより品詞別の頻出語分析や単語の組み合わせ分布の分析(共起ネットワーク)を実施し、自由記述内容に差が出ていることがわかりました。 共起ネットワークより、コントロール群は一般的な用語を使用し、「周りに注意」、「慎重に掘る」、「補助との連携」などの客観的に考えたコツに関する記述していました。一方テスト群は技能に関する用語を使用し、「バケットの位置・注意」、「周りの人」、「動かす」、「仲間と連携」などオペレーター視点のコツに関する回答が確認できました。また注目すべきことに、「掘る」という単語はテスト群の回答には一切見れませんでした。


共起ネットワーク

  • 左:コントロール群             右:テスト群

重機土工の作業において「掘る」という簡単で表面的な語を使うことなく、視線誘導により掘削の「コツ」をより詳細に分析して多様な語彙による記述に繋がった可能性が高いと考えられます。


まとめ


情報提示方法による育成効果向上の可能性を得ることが出来ましたが、より効果的な技能伝承手法の確立には更なる表現方法の検討が必要です。 今回のレポートはJSCEのIntelligence, Informatics, and Infrastructureに掲載された論文を簡略化したものです。論文が気になる方は、コチラをクリック! (英語版)